前回も述べましたが、高3の2学期は過去問演習を中心として実践的な学力をつける時期であると同時に、実際に受験する学部学科を定め目標をリアルにして行く時期でもあります。そのための検討材料として、10月、11月に河合塾第3回全統マーク模試と記述模試、センタープレテストがあります。これらの模試における成績推移と過去問演習の進捗状況をもとにして最終的な志望校を決定していくことになります。

大雑把に上述しましたが、実際のところこの時期の志望校選定は生徒の状況によって大きくやり方が変わってきます。さらに、大学入試は高校入試と異なり保護者のプレゼンスがかなり小さい(生徒が主役)ため、保護者の皆さんに「やってほしいこと」も多くはありません。そこで今回は、生徒の状況に応じた志望校選定の指導パターンと「これだけはダメ」というNGパターンをご紹介したいと思います。

パターン1 8月までに志望校候補が定まっている生徒

順当に行けば8月終わりまでの段階で受ける可能性のある志望校の候補は出そろっていることでしょう。このタイプの生徒の場合、新たな学校(学部・学科)を探す必要はもうありません。後は過去問演習や模試から見た自身の学力に応じた適切な学校をチョイスしていくという「絞る」作業になります。

このタイプの生徒の場合、志望校のことを考える時間は極力減らすべきでしょう。勉強がうまくいかなくなると志望校をこねくり回したくなるというのはほぼ全受験生に共通する行動ですので、その誘惑をはねのけ実力を上げることに専念する必要があります。よって講師の指示は

  • 邪推をして不安になるな
  • 逃避してないか自問しろ

の二点となります。前者は、「この成績では無理なんじゃないかな、先生もちょっと渋い顔してる気がしたし、やっぱりそう思われてるのかな」と、些細なことから不安を増幅させてしまう動きです。講師の発言だけではなく親や友人など周りの人の一言をきっかけに「邪推」が進んでいきます。これまで真面目に勉強してきて、成績的には現状あと一歩足りない(判定で言えばD)生徒に多く見られます。この邪推が始まると勉強が手に付かなくなり志望校の再検討を延々と始めるようになります。よって、自分自身の行動が勉強への逃避になっていないかを自問自答する切っ掛けとしての声がけが必要です。志望校についてはこのタイミングで変更する必要は特にありません。踏みとどまって勉強に集中できれば本番で十分戦えるからです。

危険なのは、8月までに志望校候補がしっかりと作られているが、明らかに第一志望と自身の学力が乖離している生徒。志望校パターンも作ってしまって周囲にも「ここを受ける」と公言してしまっているため、もう後には引けない。そう考えてはいるものの、心の中では「無理だな」と考えているタイプです。この場合だけは講師が積極的に介入して、生徒本人が「行ける」と思える大学へと志望校を変更する必要があります。一学期の時点ではまだ志望大学の本当の難しさを体感していないため、この「行ける」は思い込みの部分もありましたが、この時期になると実際に過去問を解いた経験から無理かどうかは肌で感じられるようになります。この時点で本心から「ここなら行ける」と感じられる大学であれば、実際と大きなズレにはならない場合がほとんどです。

パターン2 志望校候補が定まっていない生徒

本来は8月末までに終わっているはずの志望校候補出しが終わっておらず、この段階でも「どこをうければいいか分からない」と言っている場合、危険性がより高まります。ただし、その理由は非常に多岐にわたります。

  1. 勉強自体に集中していて、受かる落ちるをあまり考えていない
  2. 受験の流れがイメージできないので、第一志望以外は考えられない
  3. 心の中では浪人することを決めている

これまで私が見てきた中では上の3つが多かった感があります。①については稀にいる、という程度ですが、成績はどんどん上昇していくので、講師がすべて組んであげて本人はそれに微調整をかけるだけで問題ありません。

②はかなり多いパターンです。第一志望、第二志望あたりは2年生の頃から決めているけれど、実力相応校や滑り止めまで含めて時系列で試験を戦っていく感覚が無く、極言すれば「第一志望校を受けて受かればOK、落ちたら終わり」と考えています。現実感のなさと戦略性のなさの混合であるため、講師は腰を据えて受験戦略をもう一度話し、志望校選定を一緒に行う必要があります。

③も時折見られるパターンですが、大学入試において浪人をすることは一つの方法ですので、場合によっては保護者の方も交えて受験をするのかどうかや浪人の可否から話していくことになります。

これだけはNGなパターン

生徒達には折に触れてしつこく伝えていますが、二学期最大の誘惑は携帯ゲームでもラインでのメッセージやりとりでもなく、「志望校選定」です。

勉強が思うように進まない → 不安になる → 受かりそうな「もっといい」学校を探す → 勉強が進まない

このサイクルを繰り返していくのが最悪のパターンです。講師や保護者も生徒が携帯を弄っているのを後ろからのぞき込んだとき、画面に出ているのが「パスナビ」や「○○大学公式サイト」だったりすると変に安心してしまうのですが、それが2度、3度となると非常に危険です。むしろゲームでもやっている方がマシといえるかもしれません。この時期のゲームやラインは、やりたくてやっているというよりは不安を抑え込むためのツールに過ぎません。ぼうっとゲームをしながらも心はここにあらずで、強い罪悪感を抱えています。一方で、それが志望校選定に向かったとき、その行動は罪悪感を消してくれる麻薬のようなものです。「自分は勉強していないのではなくて、将来につながる志望校をじっくりと検討しているんだ」こうなってしまうとこのループから抜け出せません。

我々講師としては、安易に志望校を動かすことで生徒がこのような状況に陥ってしまうことを最も恐れています。ただ、上述したように志望校が建前になってしまっている場合や現実感がまるでない場合には、志望校選定をせざるを得ません。そのため、指示を出す際には、短く時期を区切る(一日だけは丸々調べるのに使っていいけどそれ以上は厳禁など)、条件を出す(他人に相談するな、まずは自分だけで決めろなど)などして、なるべく短期間に結論を出すことを意識しています。

ご家庭での生徒の様子

何か後ろめたいことがあるとき、人は「相手に好かれるような話題」を振って会話をします。勉強がうまくいかず実際にやれていない生徒の場合、その後ろめたさから保護者の方が喜ぶような話題、つまり勉強に前向きであることを匂わせる話題を出します。ただ、実際にはやれていないため、具体的な「英語の○○ができるようになった」などではなく、「あの志望校はこうで、ここもいいと思っていて」と、志望校についての品定めが多くなってくるのです。志望校について、服でも品定めするようにああでもないこうでもないと話し始めたら要注意です。一度ざっくり切り込んでみてもいいでしょう。

逆に、家に帰ったらすぐ部屋に行ってしまう、会話がなくなる、あるいは苦しさを吐露するなどの場合は特に問題ありません。また、特に男子に多い「何を語りかけても生返事」や「反応が鈍い」もそこまで心配する必要はありません。傍から見ているとしっかりしていないと不安になりますが、心が勉強に向いているとき、外部から言われる様々なことは生徒の中で「どうでもいいこと」になっており、まともな返答を考える余裕がないからです。

一言でまとめると、保護者の皆さんが喜びそうなこと(勉強の具体的な内容について目を輝かせて報告してくる場合以外)を言い始めたら要注意、と覚えておいていただけたら幸いです。これは講師に対しても同様ですので、塾でもそのような状況を発見したら適宜切り込んでいきます。

35年以上の指導実績

「勉強計画」「問題点の分析」「生徒の状態判断」の三本柱で志望校合格に導きます。

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偏差値55、60、65の壁を超える。生徒の能力にあったコースを展開。

高校三年生で模試偏差値50以下の状態から本格的な勉強を始め、東北大学文学部・慶應義塾大学文学部・早稲田大学教育学部・学習院大学文学部など最難関大学に現役合格したエンライテック卒業生の体験談です

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