現在の大学入試の状況

ここ数年の一般入試は一言で言って「最悪」です。国が主導する大学定員管理の厳格化に加えて首都圏回帰傾向や景気の回復など様々な要因が絡み合い、特に首都圏の大学一般入試の難度はすさまじいものとなっています。この難度上昇から生まれた安全志向の高まりにより、生徒達は自分の学力相応校よりも「一段低い」大学を狙う傾向が強まり、結果として入試における合格最低点の上昇を招いているのです。

一昔前、一般入試は「全科目合計の6割5分」程度で合格が出るのが一般的でした。しかし、現在では「8割」近くまで上昇しています。

これは、入試が「一つのミスが命取り」になったことを意味します。

大学入試は生徒達が初めて受ける「人生を変える試験」であり、プレッシャーは高校入試の比ではありません。そんな非日常の中で平静を保ち高得点をたたき出すためには安定した精神状態が必須となります。では、どうすればプレッシャーに耐えて安定した精神状態を保てるでしょうか。

勝者のメンタル

例えば高校三年生に小学六年生のワークテストを解かせたとしましょう。生徒達はリラックスしてあっさりと全問正解するでしょう。では、同じテストを「開成中学の入試問題だよ」と言ってやらせたらどうでしょうか。おそらく多くの生徒が普段はしないミスを連発します。

同じ問題なのに片方はノーミス、片方はミスだらけ。この結果の違いは明らかにテストを受ける生徒の精神状態に起因します。小六のワークテストを解く生徒達は端からテストを「下に見て」います。解けない問題があったとしたら「小六の問題を解けないわけないんだから、何か問題に見落としている部分があるんだな」と考え、冷静にそれを探します。結果としてケアレスミスは激減します。

では開成中学の入試問題であると告げられたら? おそらく「開成中の問題なんだから解けなくて当然」と見落としを探さなくなりますし、場合によっては正解しているはずの問題まで深読みしすぎてしまうかもしれません。

つまり、高得点をとるために必要なのは試験を「下に見る」ことなのです。このような試験に過度におびえず試験に飲まれない精神状態を我々は「勝者のメンタル」と呼んでいます。

勝者のメンタルの作り方

勝者のメンタルのメカニズムについて上述しました。ではこのメンタルはどのように作り出すことができるでしょう。

9月以降生徒達は本格的に大学の過去問に取り組みますが、その習熟プロセスは大体同じです。まず「怯え」。「○○大学のような難関大学の問題を自分が解けるわけない!」そう言って相談に来る生徒が絶えません。

しかし、これまでに勉強してきた時間や経験、そして模試の成績を根拠にして徐々にその怯えをとりのぞいて真摯に問題だけに向き合っていくと、やがては「○○大学って凄まじく難しいと思ってたけど、意外とおれ(わたし)でも解けるんですね!」と変わります。

上にさらりと「真摯に問題だけに向き合う」と書きましたが、この姿勢をとるために必要なのは「自分なら出来るはず」と思うことです。ただし、思い込みは無意味です。保護者や先生にどんなに勉強しているアピールをしたところで、本当に勉強してきたかどうかは自分が一番よく知っているのですから。

だからこそ根拠が必要なのです。

つまり、「これまでに勉強してきた時間や経験、模試の結果」がなければ勝者のメンタルにたどり着くことはできないのです。

時期の問題

「これまでに勉強してきた時間や経験と模試の結果が重要」

そんなの当たり前ではないかと思われるかもしれません。確かにその通り。昔から重要です。ただ、その重要度がより増しているのが近年の入試なのです。

5年ほど前までは、模試の結果が芳しくなく目標偏差値に3〜5足りない生徒が受験本番で大逆転することもありました。これはミス潰しの重要性が低く、難しくて皆が解けない問題をその場で解ければ多少の実力差をひっくり返すことができたためです。

一発逆転を狙って開き直り、試験に「胸を借りる」つもりで挑む生徒と着実に実績を積み重ねて勝者のメンタルを持った生徒。この両者が受かることが出来た過去の入試とは異なり、現在の入試では前者は不合格になります。

つまり、模試結果をしっかり積み重ねた生徒が合格する可能性が(これまでよりも格段に)高いのが今の入試なのです。

では、その「結果を出すべき時期」はいつでしょう。

それは河合塾全統模試第二回(7月後半にマーク、8月に記述)です。

一学期にやるべきこと

一般入試“冬の時代”の戦い方

一般入試がまだ平和だった数年前までは、一学期に絶対やらなければならない教科は英語と数学(私立文系の場合は英語のみ)だけでした。ほかの教科は二学期からでもなんとかなるため、とにかく時間がかかる英語と数学を万全にするのがセオリー。もちろん他教科にも手が回ればそれに超したことはないのですが、実際には部活動に時間をとられてしまい英語を進めるだけで精一杯という生徒も多くいたのが現状です。

しかし、一般入試が難度を大きく増し、河合塾第二回模試で結果を出すことが必要となった今、上記のペースでは遅すぎます。

教科としては英・数にプラスして理社の主力教科(文系であれば日本史か世界史、理系であれば物理・化学・生物の中から”武器に出来る”教科)を攻略していく必要があります。理社については従来は概要をつかむことだけが求められましたが、現在ではしっかりと知識を覚え、模試で最低でも5割以上の得点をできるところまで仕上げておかなければなりません。

時間の確保

「高3の一学期は持てる時間すべてを勉強につぎ込め」とこれまでも生徒に言ってきました。しかし実情としては部活動の忙しさや勉強のエンジンがかからないなど様々な要因からそれが不可能な生徒もある程度いました。そして我々講師側も「なんとかなる」と分かっているため、そこまでプレッシャーをかけませんでした。

しかし、これからは違います。夏までにやるべきタスクを終えられなければ合格は難しいというのが建前抜きの真実です。英数に加えて理社を進める時間を考えれば、文字通り「すべてをつぎ込む」必要があります。

ここで注意したいのは「家に帰ってからの時間」です。学校で一日授業を受け、放課後は自習室で勉強し、ぐったり疲れて帰ってきてからが勝負。さらに寝るまでの時間机に向かう必要があります。部活動をやっている生徒の場合、授業・部活動・自習と部活動の時間がさらに加わるのですから疲れはかなりのものでしょう。部活動をやっている多くの生徒が「部活と勉強を両立して頑張ります!」と言いますが、実際のところそれほど簡単ではありません。しかし、部活動と受験勉強を両立するというのは、そのキツさに耐えることです。昨今の入試状況を見るに、無理であれば早いうちにどちらかを諦めるという選択をするのも手かもしれません。 

一学期の具体的な勉強内容

英語

文法

『Vintage』(文法語法問題集)1冊を2ヶ月で終わらせる(発音・アクセント以外)。英文法・語法問題集は一見「問題集」と思われがちだが、実態は単語帳と同じ。右の解説ページを単語暗記と同じ要領で覚え、左の問題ページでテストする形式で進めていく。『Vintage』の内容が難しすぎる生徒については『英文法レベル別問題集』Lv2~3をまず進め、その後『Vintage』に進む。

3ヶ月目に『ファイナル問題集(標準・難関)』からもう一冊買い、知識の定着をテスト。

(これらの問題集が一冊定着していれば、早慶レベルであっても文法で戦っていくことは可能。現状私立難関もダイレクトな文法問題は出してこないため。また、共通テストについてはこれでオーバースペック。)

長文

『英語長文レベル別問題集』のLv.3,4,5をこなしたのち、『やっておきたい英語長文』の500、700を習熟度に応じてこなす。早慶上理、MARCH文系、国立の場合、700まで手をつけたい。問題を解いた後、文型の分析を本文に対して行う。その際、忘れている、理解できていない文法事項を見つけたら適宜学校使用の文法書に返ってチェック。国立、難関私立受験生は『ロイヤル英文法』を読み込む。

(構造分析は「マスト」

英語長文を素早く正確に理解するためには三つの力が必要。一つ目は、単文解釈力。二つ目は、長文解釈力(多読とパラグラフリーディング)。三つ目は英語速読力。これらの中で、基盤となる力は単文解釈力である。英語長文は一文の集合体にすぎないため。一文の理解を積み上げることで、長文が読めるようになる。

単文解釈力とは、単語力・熟語力・構造分析力の三つを内包している。つまり、構造分析力は英語長文を勉強する際のスタート地点。反対に、構造分析が出来なければ、いくら単語や熟語を暗記しても“なんとなく”で英文を読むことになる。“なんとなく”読んでいると、とんでもない誤訳・勘違いを生むことがある。正確に英文を理解するためには、構造分析力は必要不可欠。よって、構造分析力は大学受験をする人には必須の力である。)

単語

『ターゲット1900』をやる。早慶上志望の文系は『速読英単語 上級編』もやりこむ(夏まで)。ただし速読用長文は「文章ページ」は読み物としてざっと読むにとどめ、語句を列挙している部分を暗記する。

(単語に関しては、どの本を使っても大差ないが、『DUO』のようなフレーズ暗記系のものは注意が必要。合わない生徒にはとことん合わないのもさることながら、高3から新たにやるには遅すぎる。)

数学

数ⅠAⅡB

『基礎問題精講』あるいは『青チャート』終了後、『チョイス』へ移る。理系は『チョイス』終了後『プラチカ』へ進む。(夏まで)

(この時期の問題演習で一つの問題に何十分も時間をかけるのは危険。ざっと解いたら「模範解答」をじっくり読み込むことに重点を置き、ある程度量をこなしておく必要がある。理系最上位を目指す生徒の場合、量をこなす課題と考える課題の二本立てで進めていく。)

数Ⅲ

『カルキュール』を学校の授業進度に合わせて。

(難関を目指す生徒は、学校の進度を無視してどんどん進めてよい。)

社会

日本史・世界史

『日本史Bノート』『世界史Bノート』を河合塾模試の範囲に合わせて進める。通史を夏までに一通り終わらせ、各国史、テーマ史を夏休み中。9月からは過去問演習へ。

(通史の理解と合わせて知識の暗記もしっかり行う。上記Bノートはノートまとめの代わりにもなるので、参考書を自分で作るつもりで空欄を埋め、授業でならった重要な知識を書き込むとよい。欄外のプラスアルファ知識項目はMARCH、早慶レベルの私立でよく問われる内容がまとまっているので重宝する。模試のやり直しを進めた生徒は各国史、テーマ史の重要性に気づき、手をつけたがるが、歴史の縦糸である通史が通っていない場合危険であるため、夏までは通史をしっかりやる。)

理科

物理・化学・生物

自分で進められるようならばどんどん予習をする。できる限り、9月までに全範囲を一周することを目標とする。教科書と学校で配布された問題集を使用すること。特に教科書は非常に重要なので、必ず読み込んでいく。国立と私立難関(理科大)の生徒は、下記参考書を読みながら自習していくこと。

勉強の際に参考書『新体系物理』『化学Ⅰ・Ⅱの新研究』『チャート式新生物』を脇に置いておき、理屈が理解できない部分を解決していく。

国語

現代文

学校の授業をベースに、解法公式に当たるものを『システム現代文 バイブル編』あるいは『同 解法公式集』で吸収する。この2冊を一ヶ月以内(4月~5月中旬まで)に終わらせた後は、河合の『入試精選問題集7』へ。夏以降は過去問。

(難関受験生はこの時期から国公立難関対応の記述問題集をやろうとするが、現代文を解く際の基本原則を知らずにこれまでの「なんとなく」で解いたとしても時間の無駄にしかならず、模範解答も効果的に使えない。まずは知識として解法の原則を吸収させること。)

古文

動詞・助動詞の基本知識(動詞活用、助動詞接続・意味)を“完璧に暗記”。これを4月中。以降は『古文上達』へ。習熟度に応じて基礎編と標準編をチョイス。

(古文は幹となる文法事項(動詞・助動詞・敬語)の理解がなされれば、後は枝葉の例外事項を回収していくのみ。古文上達はどちらかといえば枝葉の参考書なので、その前に確実に幹が定着しているかチェックが必要。たとえば、助動詞の「接続」を生徒は覚えているが、接続がなぜ重要なのか、どう使うのかを理解している生徒はかなり少ない。『古文上達』は解説ページを一周した後、問題文の「全訳」を行い、理解の浅い箇所をあぶり出す。)

漢文

現状課題指示せず。学校の授業に合わせて。

35年以上の指導実績

「勉強計画」「問題点の分析」「生徒の状態判断」の三本柱で志望校合格に導きます。

コース・料金紹介

偏差値55、60、65の壁を超える。生徒の能力にあったコースを展開。

高校三年生で模試偏差値50以下の状態から本格的な勉強を始め、東北大学文学部・慶應義塾大学文学部・早稲田大学教育学部・学習院大学文学部など最難関大学に現役合格したエンライテック卒業生の体験談です

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